2011年九州:展示会レポート
「今年も九州の夏は熱い(誤植ではありません)」のですね」と、北九州の鍬塚總子さん、福岡の水口和子さんにメールを送ったのは、まだ梅雨の明けないころでした。鍬塚さん、水口さんは、昨年夏も各地で『テレジン収容所の幼い画家たち展』を開催してくださった方たちです。
コンサート『テレジン もう蝶々はいない』の福岡・日田公演などに朗読者として参加し、プラハ・テレジン公演にはスタッフとしてお手伝いしてくださった大分放送のアナウンサーだった矢野元美さんと、子どもことや平和のことなどを話し合う仲間で、もう何年の前からテレジンのことを話していた方たちでした。「やっと会えるのですね」と、冬の寒い時期に、はるばる東松山の平和資料館まで来てくださって、昨年夏、展覧会が実現しました。
美術館や図書館、小さなギャラリーや本屋さんなど各地で展覧会が開かれました。どこでも大勢のボランティアの方たちが協力して、音楽家の方がミニコンサートをしたり、中学生や高校生が詩の朗読会をしたり…という、いかにも手づくりの暖かい雰囲気のなかでテレジンの子どもたちと出会い、お話しましょうという感じの展覧会でした。
私は、7月、ちょうど1年前の今ごろ、西南学院大学での展覧会のときに、講演会をさせていただきました。暑い毎日でしたが、たくさんの方が来てくださって、すてきな出会いもたくさんありました。
あれから1年、また北九州・福岡周辺で開催したいとお話があったのです。もっともっと多くの人に見せたい!もっといろいろな人にテレジンを知ってほしい!という熱い思いのメールが届きました。(そのお返事が最初のメールです)
昨年の展覧会は、1991年から全国を回っている120枚のパネルの一部でした。これはもうかなり傷んでいて、私は見るたびに胸が痛くなる思いでいました。(不思議なことに、見に来てくださる方は、あまりそれを気になさらないようですが)
4年ほど前から、「テレジンを語りつぐ会」では、パネル修復のためのカンパをお願いしていました。茨城県牛久市、千葉県柏市などで展覧会、講演会、コンサートなどを開催していただき、そこでカンパが集まりました。都内文京シビックホールでのコンサートでも、資金を集めるために絵葉書やDVDを販売さていただきました。
その後、いろいろ相談の結果、修復より新しいパネルを作成しようということになり、昨年まず、小・中学校などに貸し出しできるような12枚セットの、絵と説明の入ったパネルを作りました。その後、テレジンの事実は、ただ過去に起こったこととして見て欲しくない、今も生きているのだというテーマで、今のプラハの写真を入れたり、生き残った方たちの証言を入れたパネル20枚が完成したのです。
新しいパネルでやりましょうと決めたら、実は沖縄、那覇市の対馬丸記念館の会期と続いていて、沖縄~東松山~福岡との移動に何日かかるのか、ひやひやしながらスタートした北九州展でした。
昨年にまして、いくつもの会場、小学校や図書館、美術館などでの巡回展です。
その準備が進んでいく中で、実は、私は3・11、地震と津波により大きな被害を受けた石巻の小学校へ行く企画を進めていました。
個人的に、以前作っていた雑誌で「石巻特集号」を組んだことがあって、石巻は、第二か第三のふるさとのように、懐かしい場所だったこと、1991年の『テレジン収容所の幼い画家たち展』開催地であったこと、それらを通じて知り合いが多くいたこともありましたが、それよりも、毎日のように報道される被災地の子どもたちのことが、テレジンの子どもたちと重なって見えたのです。
親を失い、家を失った子どもたち、学校へ行くこともできなくなった子どもたち…あの子たちのために、私たちが、第二、第三のフリードル・ディッカーになるべきじゃないのか。私たちは、テレジンをとおして、絵を描くことが生きる力になると知っている…画用紙やクレヨンを持って被災地へ行こう。行って、明日への夢や希望を語り合おう、“今日はとてもつらい日だけど、明日はきっといい日になる”と―。
その話を、鍬塚さん、水口さんに伝えました。
その結果が、たくさんの本と、画用紙、クレヨン、そして、北九州の子どもたちから石巻の子どもたちへのメッセージが集まったのです。
そのニュースは、九州展からの報告でご覧ください。
そして、石巻の報告もあります。
協力してくださったたくさんの方たち、ステキなメッセージを用意してくださった小学校のみなさん、生徒さんたちにいろいろ教えてくださった先生方に、心から感謝します。
2011年7月29日 野村 路子
雙葉学園
雙葉学園の展示が始まりました。12枚のパネルに加えて20枚のパネルも、30日に到着。(生存者の証言や今の町の様子など詳しく載っていて素敵なパネルですね)皆様のお陰で、32枚揃っての開催です。
全学年、先生やご父兄がお話してくださっているので、子どもたちが、朝から何度も絵に会いに来てくれます。ノートを持って来て、テレジンの子どもたちの名前を書く子が多く、中には、毎時間来ては絵と名前を丁寧に描く子もいて、嬉しいです。
雙葉学園での展示が、あと一日になりました。
中には、こんな方もいらっしゃいます。「昨夜、こんな絵を見に行くからねと話しました。でも、一枚目から質問攻めで。。今は分からないかもしれないけれどいつかどうして母が見て欲しいと思ったか分かる時が来るかもしれないと思います」幼稚園児と母親。
小学生の二人のお嬢さんに、とても詳しく話をなさっていたお母さんは、転勤でベルリンに住んでいたとき、ドイツ語学校で歴史の時間にホロコーストをしっかり学んだそうです。今回、学校からの案内をもらったときから一緒に本を読んだり話をして展示を待って下さっていました。
「昔の子ども達は、かわいそうに思いました。毛糸や髪の毛で描いたりするのですごいです。その頑張る子どもたちは、世界にとっても大切なこどもたち。とても大人みたいな子どもたちです。汚いベッドに寝かされてかわいそうですね。」
6年生は、道徳の時間にテレジンの学習をしました。雙葉幼稚園は、園長先生もお越し下さいました。今日も、名前を書き写す子が大勢いました。
末永文化センター
末永文化センターでは、九響や学生オーケストラの練習があり、おもったよりも多くの方にご覧いただくことができました。ご来場いただきました離島の中学校の先生が、「テレジンの子どもたち」のことを生徒に話して下さっていることを知りました。
当仁小学校
当仁小学校は、先生方、生徒たち、ご父兄、公民館たよりをご覧になった地域の方、「よみときこえのきょうしつ」の研修に来られた先生方、6年生への授業にいらっしゃったCAPの皆さんなど・・・大勢お越し下さいました。
先生方は、必ず前の時間に絵をしっかりとご覧になってからクラスの生徒を引率。校長先生は、地域の集まりの時にテレジンの開催を話して下さったそうです。
給食の後に、とても大切で歴史的にも貴重な展示をしていることや、平和学習との関連性、そして、静かに、触れないように、心に問いかけながら見るようにと人権の先生の放送がありました。
子どもたちは、落ち着いて見ていました。
次々に、質問をしてくるので答えたり話し合ったりしていて、気がつくと4時。お昼を食べるのを忘れていました。
雙葉も当仁も、同年代のテレジンの子どもたちのことを、近くにいるお友達のように心配する姿が、大人とは違った感覚です。
いのちの終わりに、憎しみではなく希望や愛情をもって生きる時間が少しでもあってよかったとホッとしたように話してくれた5年生の女の子たち。
どうして、誰も止められなかったのですか。と憤慨して聞いてきた3年生の男の子。
この人が絵を大切に思ったから、ここに絵があって樸たちが見れる。すごいです。日本には何枚あるのですか。埼玉に行くと全部見れるのですかと6年生の男の子。
いろんなことを感じてもらえたように思います。
牧山小学校
校長が懇談会があるので保護者にも見せたいといわれての延長です。昨日、5年・6年生103名に教科書の第一章を先ず読んで、お話しをはじめました。途中で私自身が涙が出てきて、必死にこらえました。
頷いたり、不思議そうだったり、どうしてそんな可哀想にと言う表情だったりいろいろでしたが、しっかり目を見て話を聞いてくれました。有り難かったです。
今日5年生の子が「わたしたち贅沢ですねえ。給食残すこともあるし」といいました。
小学校で子どもたちと話すと、おとなよりもよく感じているなあと思わされます。
この写真の男の子は2年生ですから詳しい話は聞いていないのですが、絵を見に何回もやってきました。
最後の片付けの時、重たい本を玄関まで運んだり・・・・思わず撮ったのですが、心に残ります。
南片江小学校
今年は子どもたちの優しさや柔らかい心に、たくさん触れることができ幸せでした。
子どもたちは、塾に行く子が少なくて、皆真っ黒に日焼けしシャイな子が多く懐かしい印象でした。
6年生の平和学習の時間に、「テレジンの話とハープ演奏」をしたのですが、まっすぐな瞳がきれいでした。「ハープを弾いてみたい人?」と聞くと男の子がそ~っと手を挙げてくれたのが嬉しかったです。
最後は、believeを皆で唄いました。
イイヅカコミュニティセンター
今日は飯塚で「いのち こどもとおとな」とお話しさせていただいたのですが、12日の北九州友の家の展示を見に来られた若いお母さんが「20枚も見たい」とまだ幼稚園のお子さんを連れて門司からはるばる飯塚まで来てくださいました。テレジンの子どもたちの描いた絵の力を思います。
戸畑図書館
九州展初めてのテレジンの小さな画家たち詩人たちコンサートは9人の子どもたちが詩を朗読しました。小1から高校生まで。リコーダーの笛田千裕さんが自作の「祈り」で詩と詩を繋いで、テレジンの子どもたちの絵に囲まれてやさしい時間を皆さんと共有しました。