昨年6月にNHK-Eテレで放映された『こころの時代~テレジンの絵は語りつづける~』は、私(野村路子)が、1989年にプラハの街で偶然に、あの子どもたちの絵と出会った日から今日まで、30年の軌跡を描いていただいたものでした。
嬉しいことに本当にたくさんの方に見ていただき、大きな反響がありました。そのおかげで、今年は各地で展覧会・講演会が開かれる予定になっていました。
私の住む川越市では、昨年、有志の方々で実行委員会をつくり、市立美術館で『テレジン収容所の幼い画家たち展』を開催、市民ギャラリー始まって以来最多の入場者を記録するほどの盛況でした。
見に来て下さった川合市長は「人類が二度と同じような過ちを犯さないように、テレジン収容所の幼い画家たちが描いた絵は、これからも多くの人たちに見てもらいたい」と、市の広報誌に書いてくださいました。
そして、多くの入場者の方からも「もっと多くの人に知らせたい」「来年は子どもたちを連れて来ます」「もう一度あの絵に出会いたい」などという熱い感想をいただき、かかわった仲間全員が〈やってよかった〉という思いを噛みしめ、もうその時から2020年にも!と、お互いの心に決めていました。
2回目の2020年は、展示パネルを少し替えよう、ワークショップを開いて、当時の子どもたちが絵を描いた場を追体験しよう・・・と、あらたに《テレジンを語りつぐ会in川越》を結成し、さまざまなプランも出来上がっていたのですが、コロナ感染者が増え、多くの方が会場でご一緒し、お互いに感動を語り合うことは不可能ということになりました。
本当は、こんな時代だから、あの子どもたちの《生きる力》にふれ、収容所という境遇の中でも、子どもたちの笑顔を守り続けた大人たちの姿勢を知っていただきと切に願っていたのですが・・・。
本当に残念ですが、今年の川越展は中止(ではなく、来年に延期)ということになりました。北九州・福岡・兵庫など各地の主催者も同じ決断をなさっています。7月にNHK-Eテレ『こころの時代』の再放送があり、また多くの方からお問い合わせをいただきました。「見たい」とおっしゃって下さった皆さまには、ぜひ来年を楽しみになさってください。
来年2021年は、日本で『テレジン収容所の幼い画家たち展』が始まって30年目の記念すべき年になります。
昨年も、「30年前に見た」という方が、こどもさんをつれてきてくださいました。次世代の方々との出会いも楽しみです。
2021年9月、その頃には、人間の叡智と行動力で新型コロナウイルスにうち勝ち、自粛生活の中で得た価値観と判断力で新しい世界ができているかもしれません。それを楽しみに頑張って取り組んでいきます。
私自身は、この自粛暮らしのなか、「遺書」のつもりで、この30年の間に会った人、聞いた話、見たもの、知ったこと、考えたことなどをまとめました。10月には新しい本を出版できる予定です。出版の際にはまたお知らせいたしますが、是非読んでいただきたいと今から願っています。
《テレジンを語りつぐ会》代表 野村路子